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執筆者の写真Asian Commons

「日本における刑事司法・死刑制度・死刑囚の人権を考える」

2022年10月20日、ALNメンバーを含むアジアの法律家、活動家、ジャーナリスト、日本の市民活動家らの集まりにCrimeInfoの代表田鎖麻衣子さんをお招きし、日本における刑事司法、死刑制度、死刑確定者の人権問題などについて貴重なお話を聞かせて頂きました。通訳を交えた質疑応答や議論も活発に行われ、とても実りのある会合となりました。


以下は、お話し頂いた内容をまとめたものです。少しでも多くの人が刑事司法・死刑制度・死刑囚の人権に関心を寄せることを願います。

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これまでも国際社会で注目されてきた日本の死刑制度だが、まず、日本では、19の犯罪を死刑にすることができる。判決自体は少ないものの、たとえ人の命が奪われていないケースでも死刑判決が下されることもあり得るため、死刑になり得る犯罪の数を減らすよう国連から幾度となく勧告を受けてきた。実際、今年10月中にもジュネーブの自由件規約委員会からの勧告が出る予定だ。世界中多くの国々で死刑制度が廃止されている中、日本では廃止への兆しは見られず、「国民の世論が死刑制度に賛成だから」というのがその理由として政府に引き合いに出されることが多い。


日本では、1967年以降、犯罪は減少し続けており、殺人の認知件数も減っているため、「極悪犯罪が減らないから」というのは理由にならないのが現実だ。しかしながら、殺人事件の被害者への想いを理由に、死刑制度を反対する傾向は未だに強い。殺人事件自体は、他人よりも知り合いや親族によるものの数が圧倒的に多く、起訴率は四分の一ほどである。多くの国民にとって殺人事件は遠い存在になってきている一方で、被害者や遺族への共感は高まってきている傾向がある。


死刑囚は独房に入ることが法律で定められているものの、面会などは制限され、面会は全てモニタリングされる。死刑囚にとっては死が刑であるため、刑務所内での作業は任意であり、作業は独房ですることになる。通常、死刑囚が執行を知らされるのは執行の直前で、家族や親族、そして被害者の遺族などは執行に立ち会うことが許されず、執行されたことを知らされるのは事後である。また、執行方法はアメリカなどでも進化して薬物注射が主流だが、日本は150年前と同じ絞首刑のままである。


日本弁護士連合会が死刑制度の廃止を明確に打ち出したのは2016年くらいのことで、連合会内では未だに強い反対も残っている。そんな中、死刑に反対する「市民会議」が3年前に発足したが、世論を変えるためにも、市民による横のネットワークを広げるのが課題となっている。人権活動、市民活動を報酬付きでやることが日本では困難なことに加え、戦略を練るのも簡単ではないからである。専門性の面で法務省に立ち向かうのが困難だが、理念や意識を共にする人とやりたいという想いが強い。

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